旧白夜桜花 第二話

pixivで上げていた旧の白夜桜花です。完結していないのでご注意ください。

「しょーない。俺が代わりに話すか。この話は咲呂にもしてなかったしな。」

そうつぶやく風夜の表情はなぜか少し暗かった。

その様子にどうやら隣の白月も気がついたようで、ちらっと私を見る。

風夜はひとつ深呼吸すると、ゆっくりと話しだした。

【白夜桜花~彼女の思想~】

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

今から数百年前の人間界に化け猫妖怪がたくさんいた時代があった。

化け猫妖怪とはその名の通り普通の猫とは違い、人間の姿に2本に分かれた尻尾と猫の耳をもつ妖怪の事。

化け猫は人間を襲い、魂を食す妖怪なため人間に嫌われている。

だが、人間を襲う化け猫は1部のみの話で、化け猫は次第に数が減って行った。

そんなある日奥州という国で神社にその化け猫の少女がすみついていた。

※※※

「ただいまー・・・。」

シーン・・・・。

「あっれー葉月どこ行った?」

「俺ならここにいるけど?」

後ろを振り向かえると彼はいた。

空色の長い髪を後ろに結び、海のような蒼い瞳をしている。

その後ろにはあくびをする、この国を治める主もいる。

「・・・また政宗連れてきたの。」

「またとはなんだ。またとは。」

「もうすぐ戦があるからその参りに来たんだとさ。」

「ふーん。・・・ま、頑張れ。「お前まじでホントにひどいな。」

しかめっ面する国主とこの神社の主、そして・・・人間に恐れられる妖怪。

変わった面子だが、それはそれで楽しかった。

時には喧嘩もするけど、大変な時は支えあい、そして互いに喜びあって・・・。

そんな日常を当たり前だと思い続けているうちに、

運命はふと最悪の方向へと向かっていっている・・・。

そしてある日事件がおきた。

※※※

「こっち頼むぜ咲呂」

「うん。わかった~。」

少し肌寒くなった12月の大みそか。

年越しということもあり、明日の参拝客が来るのを前に私と二人は片づけをしていた。

葉月に頼まれた置物を外に出していると、ふと目の前に一人の少女がいた。

ボロボロな着物を着ており、ぐすんぐすんと悲しそうに泣いている。

迷子になったのかと思い私は声をかけた。

「どうしたのかな。母は?」

「うぅ・・・うぅ・・・。」

私が母を聞いても彼女はただただ泣くばかり。

これはどうしたものかと思い、私はふと彼女の頭を撫でようとした。

その時・・・。

『・・・くっくっく。』

「!?」

『引っかかったな化け猫妖怪・・・さあその体を私によこせっ!』

「くぅっ!?」

触った途端少女はとても低い声で笑うと、ぶわぁっと黒い瘴気を出した。

私は偶然にも頭をなでていたので、瘴気に触ってしまった。

そしてふつふつと心の奥から憎しみが込み上げてきた。

『妖怪は人間といちゃならん。』

『お前なんかいなくなればいい。』

『妖怪は村に近づくな。」

『この人食いめ。』

幼いころに言われ続けた罵声。

忘れていたものが一気に蘇り私は狂った。

「うわぁぁぁぁぁっ!」

私は我を忘れ村を襲いにいく。

※※※

「葉月様!大変です!妖怪が村を!」

「!?・・・わかった。今すぐ行く。」

ジタバタしながら村人が押し掛けてきた。

空は暗くなっておりもうすぐ年が明けそうな時刻だろう。

俺はすぐに妖怪退治に行く準備をする。

「おい咲呂妖怪退治に行くぞ!・・・。っていねえ。」

・・・そういや咲呂何刻前からいなくなっていたな。

最初は買い物しに言ってんのかと思ったが・・・。

「・・・しょうがねえ。今日は俺だけで行くか。」

そう言って俺は一人で村へと向かった。

村人に案内され近づくと、真っ赤な炎が燃え上がっていた。

辺りから村人の悲鳴が聞こえる。・・・これは一刻も早く退治しなきゃな。

「妖怪退治は俺に任せて、みなさんはご避難を!」

「え・・・でも葉月様を置いていくには。」

「今回は被害が大きいですから、すぐに伊達から援軍が来ます。さあ早くお逃げを。」

村人の制止を無視し、俺は奥に進む。

奥に進むにつれ衣が燃えていく。

一体どうしていきなり妖怪が襲ってきたんだ。

そんな疑問を持ちながら俺は進んでいく。

喉が痛くて次第に意識も朦朧としているころ、ついにその犯人となる妖怪を見つけた。

「な・・・でかい。」

そこには真っ黒な炎をまとう大きな化け山猫の姿があった。

眼は真っ赤になっており。周りの家は次々と燃えていく。

「ぐぎゃあああああっ!」

大きな雄たけびを上げると、山猫は大きく腕をふるってきた。

逃げ場所のない俺。絶体絶命の時ふと遠くから聞きなれた声が聞こえた。

「葉月どけっ!」

さっと横にずれると、ヒュンと何かが飛んだ。

それは山猫の腕に当たり貫通する。

貫通した激痛で山猫は大きく姿勢を崩した。

「ま・・・政宗。」

「大丈夫か葉月。」

「あ、ああ・・・。」

所々焼けている陣羽織をまとう政宗がにこっと笑う。

上手く声が出せないがとりあえず感謝を言っておく。

「それにしてもなんだあいつ・・・。」

政宗は崩した山猫のほうに視線を向ける。

すると山猫はどんどんと小さくなっていった。

「な・・・。」

小さくなっていった山猫の場所に何かしら人の影が浮かび上がる。

それはどこかで見たようなもので、さっきまで俺が探していたものだった。

「さく・・・ろ?」

「うぅ・・・。」

腕を押さえながら彼女は睨んでいた。

「なんで・・・お前が。村を襲っているんだよ。」

「ぐるる・・・。」

政宗はそうつぶやくとがくがくと震えだす。

無理もないだろう。今まで一緒にいたやつがこうして暴れているのだから。

咲呂の様子をうかがう限り信じたくはないがもう・・・あの人食い妖怪になっている。

こうなるともう・・・俺でもあいつを元に戻せない。

せめて化けてさえいなければなんとかできたのだが・・・。

俺はぐっと唇をかみしめながらゆっくりと退治用の刀を抜く。

「政宗・・・お前は逃げろ。」

「な・・・。お前らを見捨てて行けって言うのか!?友人同士の争いを見て見ぬふりしてなきゃいけないのかよ!「馬鹿かてめえは!お前はあくまでも国主だろ!お前がいなくなったらこの国が滅ぶんだぞ!」・・・・っ!」

政宗の気持ちは痛いほどわかった。

けれどあいつは国主だし・・・それに友だからこそ生きてほしいのだ。

そういうとまるで俺まで死ぬみたいな言い方だが・・・。

しばらく考えていた政宗だが、ふと後ろを向くとすたすたと去って行った。

「・・・死ぬなよ。」

という言葉を残して。

政宗が見えなくなり、その場には我を忘れた咲呂と俺だけ。

俺は刀を構えると同時に札を投げた。

※※※

「くっ・・・はっ・・・はっ・・・。」

「ぐるるる・・・。」

俺は膝を落とす。

咲呂は思っていたよりも強く、かなりの攻撃を受けどくどくとあちこちから血が流れる。

こりゃやばいな・・・と思いながらも構えて再び攻めに行くと・・・。ふと咲呂の瞳から一筋の涙が流れた。

まさかとは思ったが・・・まだあいつ完全には我を失っていないんじゃないか。

だが、どちらにしても咲呂はほとんど衰弱しており助かる保証がなかった。

「なあ・・・咲呂。いまさら言うのもなんだけどさ・・・。昔お前は俺の事好きだっていってたよな?」

それは昔出会ったころになるが俺がまだ元服する前に、咲呂が俺の事を好きだと言ったことがある。その時俺はそんな恋の事など知らなくてただ単にふーん。と言って返した時があった。

けれど今思えば俺・・・咲呂の事好きだったのかもしれない。

今までずっと一緒にいたからわからなかったけど、今思えばお前の事が好きだと言える。

「俺も・・・好きだよ。お前が可愛くてしょうがねえよ。。・・・・あー俺何言ってんだろ。血流れ過ぎて頭おかしくなったかな。・・・とにかく俺はお前には生きてほしい。」

そういうと俺はゆっくりと近づいて行った。そして・・・。

「生きろよ咲呂。」

俺はあの禁じられていた技を使ったのだった。

※※※

「ということがあったんだ。」

「・・・・・・私そんなの覚えてないんだけど。」

私はただただポカーンとしていた。

そんなことが私の前世にあったなんて。「前世とは言ってないよ。」

「な・・・風夜心読んだ!?」

「いやいや声に出てたから。あとさ・・・この話詳しくは知らないんだよね。だから気にしなくてもいいと思うんだけど。」

「ふーん。だからか。通りであやふやなわけだ。」

「ごめんな。」

あれから風夜も酒を飲みすぎて眠ってしまったため、私(咲呂)と白月は外で話をしていた。

空にはとても大きな満月が上がっている。

「・・・そういやさ。咲呂。なんでお前は新撰組というところにいたんだ?」

白月がいきなり昔の私の話を聞き出した。

私は少し考えて・・・口を開く。

「あー・・・えーと・・・実は私もそこら辺は知らないんだよね。」

ごめんね。といって謝ると、白月はいいよと答える。

「ただ・・・あれだよな。新撰組って無くなったって言ったって滅ぼされたわけじゃねえんだろ?」

白月は頭を掻きながら言った。

「うん。確かに旧幕府軍と新政府軍の争いはあったけど・・・新撰組はその戦に加わろうとしていたときに隊士が神隠し的なものにあったみたいでさ・・・。」

※※※

それは私がお母さん・・・いや水菜さんの元に来るきっかけとなった事件のことだ。

新撰組は幕府からの命令を受け、旧幕府軍として鳥羽・伏見へ進軍をしていた。

その時、新撰組は隊士総出だった。・・・ただ、総出といっても沖田さんは病でもうすでに新撰組には居なかったし、藤堂さんは油小路の事件で亡くなった。

そんなわけで誰も屯所に残る人がいなかったため、私は水菜さんのところで預かってもらっていた。

その時私は10歳だった。新撰組の幹部にいつもかわいがってもらってて、特に兄のような存在だった一のことが大好きだった。

今まで一に会いたいがために幾度も脱走したり・・・。時には未来から来た人も連れてきちゃったり、戦場に入り込んだりもした覚えがある。

「ねえ・・・一は?」

「一君なら帰ってくるわよ。大丈夫だから。」

「・・・そうだといいな。」

新撰組にとっても初戦だったし、いつからか『一は?』というのが口癖だった。

だけど、新撰組からの手紙は月日が経っても来なかった。

「・・・おかしいわね。」

今までに何度か私は水菜さんに預かられていたんだけど・・・そのたびに新撰組からは手紙が来ていた。

時には一から「ちゃんとお利口にしているか?」という兄みたいな内容の手紙まできたほどだしね。

だから水菜さんは不審に思ったんだろう。

ある日水菜さんは情報集めに町を出歩いた。

すると、町では新撰組に対する噂が流れていた。

進軍中にいきなり新政府軍が出てきて争っている最中に、幹部だけいなくなったという。

主のいなくなった新撰組はそのまま敗戦し、隊士はほぼ全滅したらしい。

水菜さんはこの噂を聞いたとたん、なぜか沖田さんの顔が浮かんで沖田さんのいる屋敷に向かった。

沖田さんは幹部だったし、戦には参加してなかったからね。

だけど・・・沖田さんは・・・新撰組が出発した日辺りから行方不明になっていた。

だから町人は言っていた。

「神隠しにあった」のだと・・・。

※※※

「・・・幹部だけ消えた。」

白月はただただ唖然としていた。

「うん・・・。だからさ、私はあの後屯所に帰らずにお母さんと暮らすことにしたんだよね。」

本当は帰りたかったけど・・・。

「・・・でも、死んではいないんだよな。」

「・・・たぶん。」

「なら会えるよ。きっと。」

「え?」

私は白月の顔を見た、白月は空を眺めている。

「ほらいうだろ?空は1つしかないって。だから・・・俺は会えると思うぜ。」

「そう・・・かな?」

「ああ!だから元気出せよ!」

そういって彼はニカッと笑った。

ちょ・・・その笑顔反則・・・。

「って・・・なに顔真っ赤にしてんだよ。」

「知らない!」

「!?・・・ははーんもしかして俺に「惚れてねーよ!」いでっ!」

私は白月に蹴りを喰らわせて屋敷に戻る。

「まあ・・・そんなところが俺は好きなんだけどな。」

なんかぼそりと恥ずかしい言葉を聞いたが私は無視したのだった。

猫の記憶

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